テスラがS&P500採用が決まって株価アゲアゲ。でもそこに感じる違和感。肥大化した株価指数が株式市場の未来を壊す

オザワークスです。

電気自動車専門メーカーの米国【TSLA】テスラが株価指数のS&P500に組み込まれることが、2020年11月に発表されました。

そこからテスラの株価が上がる上がる。

天下の株価指数であるS&P500に採用されるってそんなにすごいことなんでしょうか?

でも、S&P500に採用されるから株価が上がるってそれちょっと変じゃね? っていう大事な話。

S&P500にテスラが採用されて株価が上がる理由とその違和感

2020年11月16日、株価指数のS&P500を作成・提供するS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス社から「S&P500指数に電気自動車メーカーの【TSLA】テスラを新たに組み入れる」と発表がありました。

組み入れられる日は、12月21日です。

この記事を書いているのが12月8日で、S&P500への組み入れ発表からここまでテスラの株価はうなぎのぼりです。

11月16日に408ドルだったテスラの株価は、12月7日の時点で641ドルと短期間でとんでもない上がり方をしています。

テスラの株主たちはもちろんホクホク。何人もの投資ブロガーも、指数への組み入れが契機となってテスラはもっと上がるだろう、と言っています。

その通り、テスラはS&P500に入ることでもっと株価を上げることでしょう。

だって、S&P500に連動する数々の投資信託やETFが、新たにテスラの株を大量に買わなければならないから。

株価は買われると上がります。

だから今からでもテスラの株をみんなも買おー! で終わってしまうのは、凡庸な投資ブログ。

ぼくは、このテスラのS&P500組み入れに関係する株価上昇にどうにも違和感を感じています。

どうにも納得できない。

いや、この後テスラが暴落するとかそういうことではなくて、株価指数に入るから株価が上がる、という点についてね。

あ、株価指数、S&P500、S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス、こういった投資用語がわからない方はこちらの用語解説を参照してね。

S&P500というブランドの有無で株価が変動するのは変だ

いや~、いつもいつも違和感を感じていてすみません。

でもね、ある個別企業の株価が、超有名な株価指数に組み込まれることが発表されるとバカに上昇するってのは、どこか変だと思うんですよね。

まず株価というものは、その企業の価値を表しているものです。

その企業が素晴らしい! 欲しい! と思う投資家が多ければ、その企業の株は買われ株価は上がります。そして結果としてその企業の価値が上がったんだね、となります。

これが筋です。

ところが、ある株価指数が優秀で世界中の投資家から信頼されているとして、その優秀な株価指数にある企業がこの度新たに採用されると決まって、それで株価が上昇する。

その株価上昇ってなんか順序がおかしいとぼくは思うんですけれど、共感いただけますかね、これ?

つまり、企業の価値が上がったから株価も上がるのではなく、もっと単純に、有名な株価指数のラベルが付くから株価が上がっていないか? ということ。

今ちょうど2020年のミシュランガイドが発表になっているからそれで例えると、実際にそのお店の料理が美味しいかどうかではなく、ミシュランの星が付いているからわーすごい! になってませんか、ということなんです。

株価は企業の価値で決まるものなのに、株価指数というある種のブランドが株価を左右させている。

もっと踏み込んで言えば、その株価指数を作っている組織なりが、株価を決定付けてしまっている。

これって変でしょ? ということが言いたい。

いつか、指数に頼り過ぎた我々投資家たちが株式相場を壊す

いや、そんなことどうでもいい。実際問題テスラの株価は上がっているし、S&P500に連動したETFの株価も上がっているんだから、それでいーじゃん。

皆様のおっしゃることは、ぼくもわかります。自分が儲かるならそれでいいですよね?

ぼくもそうです。難しい話嫌いです。

でもこの問題って、いずれ遠い将来、成長し過ぎた株価指数が株式相場全体を歪め、壊してしまう道に繋がっている重要な問題なんです。

いつの日か、大きくなり過ぎた株価指数が、いえ、違いますね。株価指数に頼り過ぎた我々投資家一人ひとりが株式相場そのものを破壊してしまうのです。

インデックス投資は優秀であるが故に肥大化している

株価指数への投資は非常に優秀です。

簡単に言えば、1つの投資信託やETFを買うだけで広く分散投資ができるからです。

株価指数への投資(インデックス投資とも言う)は、非常に効率的で、安全で、理性的です。

投資の初心者からベテランまで、誰にとっても最適な投資法。

それが株価指数への投資と言っても言い過ぎではないでしょう。

事実、優秀である株価指数への投資は優秀であるからこそ世界中の投資家から愛されて人気です。

ただ、優秀であるが故に株価指数への投資は人気になり過ぎました。

株価指数に連動する投資信託やETFへ毎年莫大な投資資金が流れ込み、ファンドは超巨大化。

ETFの運営会社などが多くの企業の大株主になっているのが現状です。

S&P500に連動するETF3銘柄の純資産額(時価総額)

シンボル 銘柄 純資産額
SPY SPDR S&P500ETF 33兆円
IVV iシェアーズ・コアS&P500ETF 24兆円
VOO バンガードS&P500ETF 18兆円

日本で一番大きい会社であるトヨタ自動車の時価総額が23兆円であることからも、これらのファンドがいかに巨大であるかがわかると思います。これはそれだけ多くの投資資金が集まっているということです。

ただ、現状ではそれでもこんなものです。

これらのファンドは将来的にもっともっと規模を拡大していきますが、そうなったときに大きな問題が起こってきます。

株価指数が企業を格付けする未来

株価指数は、それぞれ独自の尺度でその構成銘柄を決めています。

どのような株価指数でも構成銘柄の入れ替えがあり、入る銘柄、外れる銘柄があります。

超々巨大なファンドが連動する株価指数で銘柄入れ替えが起こると、連動しなければいけませんからファンドは保有銘柄の売買を行います。これがものすごい金額になるんです。

新たに組み込まれる銘柄は大量に買われ、外れる銘柄は大量に売られることになります。

その結果、それぞれの企業の業績とはあまり関係なく株価が極端に上がったり下がったりします。

企業の価値ではなく、株価指数の銘柄入れ替えが株価を決定してしまうのです。

この状態がもっと進むと株価指数に採用されるか否かが、企業価値を決めてしまうことになります。

人気のある株価指数に採用される企業だけが優れた企業で、他はゴミ。

株価指数の実質的な「格付け」化です。

まあ、これは極端な例ですけどね。将来的にもっともっとファンドが大きくなって力を付けてしまうと、株価というものの意味自体が変容してきてしまうという話です。

株価指数作成者への賄賂と株価の無意味化

また、こういうことも起こりうるでしょうね。

ぼくがどこかの企業の社長だったらこう考えます。

(うちの企業も有力な株価指数に採用されて株価を押し上げてもらいたい)

(でも簡単には採用してもらえない。何かいい方法はないものか)

(そうだ! 贈り物をしよう!)

社長であるぼくは、株価指数を作成している会社にお金を支払って自分の会社を指数に採用してもらえるように頼むでしょう。

株価が上がれば経営もしやすくなるし、何より社長である自分も自社株を持っています。

それなら何億払ったって惜しくない。

もしこれでぼくの会社が指数に採用されて株価が上がったりしたら、株価って一体何なんでしょうね?

株価指数があまりにも株価に影響を与えすぎるようになると、こういう事例も当然起こってくると思います。

いや、もう起きているのかも?

株価指数を妄信するなかれ

株価指数とそれに連動する超巨大ファンドの存在が、株式市場を歪めてしまうということがお分かりいただけたでしょうか。

今回のテスラの株価上昇には、すでにその気(け)があります。

株価指数への投資は、確かに優秀です。ここで文句を垂れているぼくもやっています。

ただ、インデックス投資は素晴らしい! 素敵! もうどうにでもして! と世界中の投資家たちが株価指数に身を委ねていく先には、市場の崩壊が待っています。

50年後の個人投資家は、もしかしたらもう「個別株」という言葉を知らないかもしれません。

投資信託やETFを買うな、とは口が裂けても言いませんが、自分が買っている投資信託やETFがそういう仕組みの上で成り立っているものだということは、ぜひとも頭の片隅に置いておきたいものです。

ダウ平均の銘柄選定にケチをつけた記事でも言いましたけど、株価指数を妄信するのはいけませんね。

その仕組みを理解して、上手く使いましょう。

オザワークスでした。

"share"とは株式を意味する英単語でもある

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オザワークス
なまえ:オザワークス 生まれ:1980年 投資は2013年から開始。長野県在住。 投資初心者、またははじめてアメリカ株に興味を持たれた方向けに「米国株の長期配当投資」を紹介しています。 自分自身も米国株投資家でして、配当金を再投資して株を買い続け、不労所得のさらなる増大を目指します。 また、分散投資を重視し、毎日配当金が入金するようなポートフォリオを作っていきます。 外国株CFDでも米国株に投資し、CFDを舞台に長期配当投資へ挑戦しています。 証券会社選びから税金関係まで、初心者向けの米国株情報ブログを目指します。