米国株投資家のオザワークスです。
外貨建てMMFという投資商品があります。これは投資信託の一種で、外貨建ての格付けの高い公社債に投資するため、元本の高い保全性がウリとなっているものです。利回りはぼちぼち、伸びないけど損もしない投資,と言ったところです。
その他、米国株投資の投資資金の待機場所に最適、などと言われています。証券口座に外貨をそのまま置いておいても金利は付きませんからね。だったらわずかな利回りでも、というわけです。
しかしながら、ぼくは外貨建てMMFが米国株投資と相性の良いサポート役、という意見には賛成しかねます。投資資金の置所という使い方は合いません。
今回は、外貨建てMMFの特徴とその問題点について解説します。
もくじ
外貨建てMMFの特徴
外貨建てMMFは、外貨建ての公社債に広く投資する投資信託の一種です。元本保証ではありませんが、投資対象の格付けは高めで、額面割れは相当起こしにくい設計となっています。堅さ重視の運用なんですね。
堅さ重視である外貨建てMMFは、株式で言うところの株価に相当する「基準価値」というものがまったく増えません。100ドルで買った外貨建てMMFは、何年経っても100ドルのままです。カッチカチです。
現金並みに硬いのはわかった。では外貨建てMMFに投資する旨味は何かと言えば、それは分配金(配当金)です。
ネット証券最王手であるSBI証券で取扱のある、「ブラックロック・スーパー・マネー・マーケット・ファンド」という外貨建てMMFは、配当利回りが約2%です。
米ドル建ての外貨建てMMFもいくつかありますが、大体その配当利回りは1%台後半から2%といったところが相場のようです。米国株のような3%4%という配当利回りは、米ドル建ての外貨建てMMFではありません。
ちなみに、毎月配当です。
その他の特徴として、購入時と売却(解約)時ともに取引手数料は無料で、またいつでもとりひきができます。
まとめると、銀行預金並みに投資元本を守る硬い運用をしながら、1%~2%ほどのそれほど高くもない配当金を受け取る投資となります。配当利回りは正直物足りないけど、とにかく損はしたくないから我慢すっか、みたいな感じでしょうか。
外貨建てMMFに実際投資するとこんな感じ
ざっとその特徴を説明しただけではわかりにくい部分もあるので、実際に外貨建てMMFに投資するとこういうふうになる、というシミュレーションをしてみましょう。
外貨建てMMFは、外貨と日本円そのどちらでも取引ができます(ただし、日本円で取引する場合は所定の為替手数料を取られる)。とりあえず、今回は米ドルで米ドル建てのMMFを購入してみます。
1000ドル、配当利回り2%の米ドル建てMMFを買ったとしましょう。取引手数料はありません。口座には、米ドル建てMMFが1000ドル分あると、表示が出ます。
外貨建てMMFは毎月配当です。買った翌月、初めての配当金が入金します。配当金が入金すると、口座の表示は1001.6ドルになっています。数字は税金とかは無視した若干テキトーな数字です。あくまで感覚ね。
実は、外貨建てMMFの配当金は、入金するとともに自動的に再投資が行われます。現金では受け取れません。なので、外貨建てMMFを今保有している額が、1000ドルから1001.6ドルへと受け取った配当金の分だけ増えることになります。
あとはこれの繰り返しです。翌月には1003.3ドル、その次の月には1004,9ドルとかそんなふうにゆっくりと資産が増えていきます。数字はあくまでぼくの想像ね。
はじめに投資した1000ドルは一切変わらずに、その上に配当金の薄皮が毎月積み重なっていくイメージでぼくは見ています。
米国株投資と外貨建てMMFの大きな違いは、配当金が自動的に再投資されることと、投資元本の変動がほとんど確実に無いことです。
外貨建てMMFは投資の優等生
ここまで外貨建てMMFの特徴を読んでみて、ちょっといいじゃん、と思った方いるはずです。ぼくも書いていて、基本的に筋の良い投資ではあると思います。ていうか前からそれは知っていました。
損をしないように手堅く手堅く、配当金は少ないけれどコツコツやっていく。ぼく好みですらあります。
投資初心者にもおすすめできます。特に投資資金が1千万円単位である人は、下手に株式に手を出すよりも外貨建てMMFを毎月買い足していくだけでも、地味ではありますが長期的に見て確実な成果を挙げるでしょう。繰り返しますが、投資として素性は良いんです。
実際外貨建てMMFを評価する人もそれなりにいて、良かれと思って紹介する人も多いですね。ボロクソ言うような記事は見たことがありません。
ただ、そんな優等生の外貨建てMMFですが、使い方を誤ると牙を向きます。
外貨建てMMFを投資資金の一時的な置き場所にする、という活用法
外貨建てMMFは投資元本の保全性が高く、利回りは低いものの毎月配当で、購入売却ともに取引手数料なし。このような特徴を知り、これは使える、と考えた者たちがいました。
米国株投資家です。
彼らは、投資資金の一時的な置き場所として、外貨建てMMF(の中でも特に米ドル建てMMF)が使えるのではないかと考えました。株の世界は波があり、その波に合わせてあるときは投資資金を前のめりで株に使い、またあるときは資金を温存したりするのが彼らです。
その投資資金を一時的に温存している状態を「もったいない」と考えるのもわかります。また、証券口座は銀行口座のように資金を預けていても利息が付きません。これもまた彼らの「もったいない」に拍車をかけました。
米ドルという現金をただ持っていても利益は生まれない。かと言って今は米国株に投資する「そのとき」ではない。何か手頃な運用先はないものか。そうしてたどり着いたのが、外貨建てMMFだったのです。
実際条件は合います。次の米国株の投資チャンスまでの一時的な資金の置き場所ですから、株価のように下落してはたまりません。元本は守られるべきです。
また、長くても1年、短ければ数ヶ月という運用期間でも、毎月配当の外貨建てMMFならしっかりと配当金という果実を収穫できます。
さらに、取引手数料は無料でいつでも取引可能なので、いざ米国株! という株の買い場が急に現れた場合でも気兼ねなく現金化して米国株投資の資金に当てられます。
米国株投資にとってこんなにも都合の良いものが!
彼ら、米国株投資家たちはさぞや喜んだことでしょう。いや、彼らではなく、かつてのぼくですね。
しかーし!
あの日の外貨建てMMF。守られなかった投資元本
実際に外貨建てMMFを利用してみて、ぼくは落胆しました。外貨建てMMFの良さの1つである、投資元本の保全が破られたためです。
いや、外貨建てMMF自体の元本が毀損した、というわけではありません。そんなのはリーマン・ショックでも起こらない限りありません。
為替です。為替の変動によって外貨建てMMFの購入時と売却時の「日本円換算」の基準価値に差が生じ、そこに利益が生じ、結果として税金が生じ、税金を支払ったあと残った米ドルキャッシュは投資額を下回りました。
ぼくにとって、米国株投資用の資金を一時的に安全に運用するのが外貨建てMMFの役割です。売却して戻ってきた米ドルが元よりも減っているとは何事か。ぼくは落胆しました。
外貨建てMMFで投資元本が減るカラクリ
ぼくは外貨建てMMFで投資元本を減らしましたが、そのカラクリはこうです。
配当利回り2%の米ドル建てMMFを特定口座で1000ドル分買ったとしましょう。利回り2%を自動で再投資するということは、配当に対する税金を無視すれば、1年後の保有額は1020ドルのはずです。
次に米ドル建てMMFを購入したときのドル円の為替レートが1ドル=100円で、1年後はそのレートが1ドル=120円の円安へと動いたとしましょう。
その1ドル=120円のときに、保有する米ドル建てMMF1020ドルをすべて売ったとします。取引手数料は無料ですから、売却後の証券口座には1020ドルの米ドルキャッシュが入ってくる、なら問題は何も起こりません。
しかし実際は、1000ドル(1ドル=100円で日本円換算10万円)で購入したものを1020ドル(1ドル=120円で日本円換算12万2400円)で売り、しめて2万2400円の利益を出したとみなされます。
そのようにみなしているのは証券会社です。証券会社は外貨建ての投資商品であっても常に日本円で計算しています。
そして、利益が出たということは、その利益に対して税金が課されます。約20%の源泉分離課税です。額にして4480円。この4480円が投資家の証券口座から徴収されます。
なに? 証券口座に税金分の日本円がない? ご安心を。たった今なんちゃらMMFを売って米ドルが入ってきたじゃないですか。4480円は、約37ドルちょっと。証券口座の1020ドルから税金を引きましょう。
差し引き、983ドル、ちーん。
なんと、外貨建てMMFを買って売っただけで、1年間でもらった配当金の20ドルが吹き飛ぶどころか、最初に投資した1000ドルすら割り込んでしまうのです。
これが為替が悪い方向に働いたときの外貨建てMMFの恐ろしさです。
資金の一時的な置き場所なのに、それが減るのは本末転倒
米国株投資家が外貨建てMMFを利用する目的は、まず第一に投資資金の安全な管理です。それが元本を割り込んでしまうようでは、ダメです。
配当利回りがどうとか、そういうことではありません。本末転倒なのです。
外貨建てMMFは株式の株価のように、基準価値の変動がありません。1000ドルで買ったものはずっと1000ドルです。
薄皮のようにその1000ドルを配当金で包んでみはしますが、所詮それは本当に薄皮。基準価値の変動がないがゆえに為替の影響をもろに受けて、中身のアンコがほら、すぐに出てしまう。
繰り返しますが、10年20年30年の長期で外貨建てMMFの運用をするなら、それは有効だと思います。予測の大変難しい為替の動きなど、端から無視すればいいですからね。
しかし、1年とか数ヶ月の単位での外貨建てMMFとのお付き合いは、注意を要します。ひどく円安の状況であれば、あるいは……とも思いますが、そこまで考えて一時的なお付き合いをするべきかそもそも疑問です。
一度傷を負っているから、ということもあるのでしょうけれど、ぼくだったら外貨建てMMFは利用しません。
元本の減らない外貨預金が良い
では、外貨建てMMFアレルギーのぼくが代わりにどうしているか紹介しましょう。
これはSBI証券のみですけど、グループ銀行の住信SBIネット銀行の外貨預金を利用しています。SBI銀行の米ドル普通預金の金利は0.7%と外貨建てMMFよりも圧倒的に下回りますが、銀行預金なのでよほどのことがない限り元本が減ることはありません。
プラス、SBI銀行は円⇒ドルの為替手数料が安いです。普段は1ドルあたり4銭ですが、現在はキャンペーン中で3月末までなんと0銭、無料となっています。
さらにプラスして、SBI銀行とSBI証券の間は、米ドルを手数料無しで何回でもいくらでも資金移動させることが可能です。SBI銀行⇒SBI証券に限っては「即時」の移動です。
SBI証券での米ドルキャッシュの運用は、ぼくの場合はこんな感じです。
外貨建てMMFや外貨預金より、米国株のがもっと良い
とはいえ、住信SBIネット銀行での外貨預金も、ぼくはあまり積極的にはやっていません。NISA枠の絡みで、毎年9月頃から年末までの期間限定です。それ以外の期間は、SBI証券の証券口座に現金のまま置きっぱなしです。
証券口座は金利すら付きませんが、ぼくは気にしていません。というのも、数百ドルくらいの現金があれば、さっさと米国株なりETFなりを買ってしまうからです。これは他の証券会社でもそうです。そもそも現金を貯めません。
外貨建てMMFや外貨預金など、米国株に比べれば鼻クソです。本来ならまったく関わる必要も感じません。
これは、何ら理論的な裏付けのある話ではありません。ぼくの性格と確信がそう言わしめるのです。
外貨建てMMFや外貨預金よりも、最重要は米国株です。これは揺るぎません。
オザワークスでした。
あ、ちなみに、揺るぎない米国株も為替の影響はガンガン受けます。こっそり内緒で揺らいじゃうこともあります。その辺りの話はこちらです。
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