ドルの謎。ドルと名の付く通貨が世界中にある。これ何で?

オザワークスです。

米ドルという通貨があります。

言うまでもなく、米国の通貨のことです。

でもでも、世界には米ドルの他にも「ドル」と名の付く通貨がいくつもあって、今でも各国で使われています。

普通の感覚だと、通貨は一つの国に一種類。日本⇒日本円みたいに。

◯◯ドル、△△ドルなんて複数あるのは、ドルくらいのものです。

一体、「ドル」って何なんでしょう?

ドル($)は世界に何種類もある!

世界を見渡してみると「ドル($)」を通貨とする国と地域は複数あります。

代表的なところで、

  • アメリカ合衆国・米ドル
  • カナダ・カナダドル
  • オーストラリア・オーストラリアドル
  • ニュージーランド・ニュージーランドドル
  • シンガポール・シンガポールドル
  • 香港・香港ドル

などでしょうか。他にもあります。

当たり前ですが、それぞれドルを使う国の中では、「オーストラリアドル」などと呼称せずにただの「ドル」と日常的に呼ばれます。

ただ、カナダと米国は隣国同士ですし、オーストラリアとニュージーランドなども隣の国みたいなものです。

あまり近い国同士で、同じ名前の「ドル」だけど通貨としては別ものになる「ドル」を使っているのは、混乱の素というか色々とやりにくくないのでしょうか。

世界で唯一の「日本円」を使う日本人であるぼくなどはそのように思います。

まったく別の名前の通貨にしておけばいいのに。それが素朴は感想。

実際、世界の通貨のほとんどは、その国でのみ認められている唯一無二の通貨です。

英国だったら、ポンド。中国だったら人民元。EUはユーロでこれはまたこれでちょっと違う事情を抱えてはいるものの、ドルみたいに第2第3のユーロは存在しないわけです。

そうなっている理由はやはり、そのほうが合理的だからでしょう。

となると、やっぱりドルが異質に見えます。

特に世界の基軸通貨が米ドルである以上、世界中の国々で米ドルは頻繁に使われます。

カナダドルを使うカナダでもそれはそう。ドルとドルでどっちのドルだかわけわかめ。

うーん、どうしてドルの世界はこうなっているのでしょうね?

ドルを採用する国と地域の共通点

先ほどのドルを使う国と地域の一覧を見て、ぼくは「おや」と思いました。

  • アメリカ合衆国・米ドル
  • カナダ・カナダドル
  • オーストラリア・オーストラリアドル
  • ニュージーランド・ニュージーランドドル
  • シンガポール・シンガポールドル
  • 香港・香港ドル

ドルの使う国はこれですべてではないですが、ドルを使う主要国にある共通点を見つけました。

これらの国と地域は宗教や人種や政治体制などバラバラですが、かつて英国(イギリス)の植民地だった場所です。

かつて英国は「大英帝国」などと呼ばれ、世界の七つの海を支配して世界中に植民地を持っていました。世界の覇権国だったのです。大体18世紀後半から20世紀初頭くらいまでのことです。

その大英帝国の「元」植民地でドルという通貨がよく使われている。

しかしながら、英国の通貨の単位は現在もそうですが、昔の大英帝国時代でもポンドでした。英国でドルが使われた歴史はありません。

うーん……世界各地に散らばる「ドル」と大英帝国の植民地。この2つが何かつながったかのように一種運思えたのですが、ぼくにはまたわからなくなってしまいました。

ドルの起源は、銀貨「ターラー」にあり

そもそも英国でドルが使われた歴史はない。

では「ドル」とは一体どこから来たものなのでしょう?

ドルのルーツは、16世紀のヨーロッパで造られた「ターラー」という名の銀貨にあります。

特にドイツで作られた「ヨアヒムスターラー」は銀貨として品質が良く、のちにヨーロッパ各地でヨアヒムスターラーを参考にして次々「ターラー」の名を持つ銀貨が盛んに発行されます。

「ターラー」とは、元々は「谷」の意味です。だったのですが、銀貨としてのターラーがヨーロッパで定着するうちに、次第に「ターラー」は質の高い貨幣「良貨」の意味を持つようになっていきます。

そのターラーが「ダーラー」と訛り、さらに「ドル」に変化していきます。

銀貨ターラーは、19世紀ごろまでヨーロッパのみならず世界中で使われることになります。

米国の通貨はどうして「ドル」になったのか

アメリカ合衆国(米国)は、1776年7月4日、英国の植民地から独立しました。18世紀後半のことです。

当時絶好調の英国から植民地が独立したのはおそらく米国が初めてです。当然植民地の支配者であるである英国は独立に反対で、独立戦争に打ち勝って独立を果たしました。終戦は1783年。

植民地が独立してこの度一つの国となった。となるとそこで通貨をどうするのかという問題が出ます。

英国の植民地時代は、もちろん英国の通貨であるポンドを使っていました。いや、使わされていました。

なので、当時の米国人の心情としては、旧支配者の通貨であるポンドをそのまま使うという発想は、まず選択肢になかったのでしょう。せっかく戦争までして独立したのですから。

当時、北米大陸では英国のポンドの他、南のメキシコ産の「メキシコドル」銀貨も広く流通していました。

メキシコは銀の産地であり、メキシコ産の銀はメキシコを植民地としていたスペインに莫大な利益と繁栄をもたらしました。

スペインはメキシコで銀を手に入れ、それをヨーロッパで銀貨ターラーとして大量に発行しました。英国の前の覇権国はスペインだったのです。

そしてターラーはヨーロッパだけでなく植民地のメキシコでも使われることになり、「メキシコドル」へとつながります。

独立して間もない米国政府は、旧支配者の通貨であったポンドは拒否して、民衆にもなじみのあった「ドル」を新しい通貨として採用しました。

独立宣言から18年、1794年米ドルの誕生です。

2度の世界大戦が、米ドルを世界の基軸通貨とした

その後、米国は米ドルとともにめきめきと経済力、軍事力、世界政治の中で存在感を高めていきます。

一方、全世界に巨大な植民地を持ち、日の沈まぬ大帝国と呼ばれた大英帝国は、19世紀も終わりごろになると猛烈に成長する米国やドイツなどに追いつかれるようになります。

英国の覇権が決定的に終わったのが、1914年の第一次大戦の勃発です。

第一次世界大戦はヨーロッパが主戦場となり、戦渦に巻き込まれた英国本国は勝利したものの疲弊、没落しました。

その英国に代わって世界の覇権国に躍り出たのが、米国です。米国は国土が戦場にならず、戦争に参加する国々などに武器弾薬などを売って大儲けしていました。

世界の覇権国が英国から米国へシフトしたことで、世界の中心となる基軸通貨もポンドから米ドルに代わりました。

そして、第二次世界大戦。またもヨーロッパは戦場となり、無傷の米国が大勝利。これで完全に西欧の時代が終わり、米国一強の時代が現在に至るまで続いています。

解けない疑問。何故ドルは何種類もある?

さて、ここまで「ドル」と米国の歴史を見てきたわけですが、最初の疑問、どうして「ドル」と名の付く通貨が世界各地にあるのか? についてはあまりわかりません。

良質な銀貨のターラーが世界中で使われたその名残? と言えるかもしれません。その可能性はあります。

「ドル」は「良い通貨」の意味であり、通貨の名前としては名門です。

少なくとも米ドルについてはその意味はあるでしょう。

米ドルは正しくターラーの歴史を継いだ通貨です。

しかし、現在も残る他のドルはどうか?

  • カナダ・カナダドル
  • オーストラリア・オーストラリアドル
  • ニュージーランド・ニュージーランドドル
  • シンガポール・シンガポールドル
  • 香港・香港ドル

これらのドルは、何故ドルなのか? そして何故、旧大英帝国の植民地にドルは多いのか?

ここが結びついてこない。そのために各ドルの始まりを見てみましょう。

世界の覇権が米国に移るとき、通貨もまたドルに移ったのか?

各国のドルは以下の年に初めて発行されています。

  • 米ドル・1794年
  • カナダドル・1858年
  • 香港ドル・1863年
  • オーストラリアドル・1966年
  • ニュージーランドドル・1967年
  • シンガポールドル・1967年

ここには挙げていませんが、カリブ海や太平洋上の小さな島国では、ドルを採用する国が多数あります。

そしてその多くが英国の旧植民地であり、かつ、20世紀に入ってから独立してドルを導入しています。

これらのことを確認してぼくは仮説を立てました。

確かに「ドル」という通貨は「良い通貨」の意味があり、通貨の名前に困ったら「とりあえずのドル」という感覚が特にヨーロッパ人にはある感じがします。

しかし、それとは別に、19世紀後半以降の米ドルの世界における存在感。

さらに20世紀以降の英国ポンドに代わる圧倒的な経済的支配力が、1931年のウエストミンスター憲章以降次々英国から独立していく新国家がドルを採用する理由となっている気がします。

つまり、覇権国が英国から米国に移ったとき、英国から独立した国がそれまでのポンドを捨てて新しい世界経済の支配者である「ドル」を受け入れたのではないか? と思うわけです。

それが、英国の旧植民地にドルの採用国が多い理由なのではないでしょうか?

20世紀以降のドル採用国はほぼその理由である気がします。ついでに言うと、ドルの採用が多いカリブ海や太平洋は、世界大戦以後米国の「庭」です。共産圏のキューバは除いてね。

米国の時代が終わるとき、世界中の「ドル」も終わる

このぼくの仮説が正しいのかどうかはわかりません。

ネットでちょっと調べたくらいでは答えは見つかりませんでした。

カナダがドルへの切り替えが早いですが、これは米国の隣にあって、宗主国の英国よりも結びつきが強くなるのが早かったからです。

香港ドルも早いですが……これはよくわかりません。

ただ、経済の覇権国の通貨が世界中に飛び火する、というのは大英帝国の大ポンド時代もそうでした。

歴史は繰り返すものです。

いつの日か、ドルの時代も終わりを告げるでしょう。ぼくたちがみんな死んでしまったあとでね。

こんなふうに通貨や経済や歴史をつなぎ合わせて考えてみるのも、たまには良いかと思います。

オザワークスでした。

"share"とは株式を意味する英単語でもある

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オザワークス
なまえ:オザワークス 生まれ:1980年 投資は2013年から開始。長野県在住。 投資初心者、またははじめてアメリカ株に興味を持たれた方向けに「米国株の長期配当投資」を紹介しています。 自分自身も米国株投資家でして、配当金を再投資して株を買い続け、不労所得のさらなる増大を目指します。 また、分散投資を重視し、毎日配当金が入金するようなポートフォリオを作っていきます。 外国株CFDでも米国株に投資し、CFDを舞台に長期配当投資へ挑戦しています。 証券会社選びから税金関係まで、初心者向けの米国株情報ブログを目指します。