オザワークスです。
米国株投資をやっています。米国株投資では、日本株投資では起こりえない不可思議な現象がしばしば起こります。
例えば、ある米国株を1株100ドルで買いました。1年後、100ドルで買った株の株価は、変わらず100ドルでした。試しにその株を100ドルで売ってみると、あら不思議。利益が発生していないにもかかわらず、税金を取られてしまいました。
こんなことが起こります。
普通、株の売買で発生する税金は、株を安く買って高く売って得た、その利益に対して課されます。ところが米国株の場合だと、買値と売値が同じでも、利益に対しての税金が発生してしまうことがあるんですね。
はい。今回は、米国株の利益と損失は株価以外のものでも決まっているのか、についてお話します。
もくじ
米国株の価値は、株価と為替で決まる
皆さん株を買うとき、それから買ったあとは株価をよく気にすると思います。株価は毎日上がったり下がったり変動していて、そのたびに自分の資産も変動するわけですから、気になるのも当然ですよね。
米国株も、株価はよく動きます。しかし、毎日コロコロ値動きが変わるのは、株価だけではありません。ドルとか円とかの為替も同じです。為替もひっきりなしに動きます。
米国株は、米ドル建ての投資です。日本円を米ドルに替えて、それで米国株に投資しているのです。日本円のまま米国株の買い付けができる、という証券会社もありますが、最終的にはそれも米ドルでの投資で、根っこは同じです。
つまり米国株投資は、株価と為替、この2つのせわしなく動く要素でその価値が決まっているのです。株価は気にするけど為替はアウトオブ眼中、という方結構多いと思います。見落としがちなところなので気をつけましょう。ぼく自身もね。
100ドルで買った米国株を100ドルで売って、何故税金を取られるのか?
というわけでこの記事のタイトルの話になるわけです。100ドルで買った米国株を、1年後同じ100ドルで売った場合、利益が発生してそれによって税金の支払いも起こってしまうことがある。
裏で悪さをしているのは、もちろん為替です。
具体的に計算してみましょう。
100ドルの米国株を1ドル=100円の為替レート時に1株買ったとします。買った直後、その株の価値は米ドルで100ドル、日本円では1万円です。
1年後、株価は変わらず100ドルのままでした。しかし為替レートは1ドル=110円になっていたとします。その株の価値は、米ドルでは100ドルと変化なしですが、日本円で見ると1万1000円と1000円価値が増しています。
その株を売ると当然1000円の儲けとなり、利益の1000円の約20%(200円)を税金として支払うこととなります。
米国株投資では、こういうことが起こりえます。
米国株投資を日本円換算で考えることの、闇
ん、そんなに大したことじゃないんじゃない? と思われる方もいらっしゃるかもしれません。ただ、これを見てもそう思えるでしょうか。
上で書いたような取引を、特定口座で米ドルを使って行ったとします。さらに、株を買ったあとの買付余力はゼロ、残金はまったく無しとしましょう。取引手数料もややこしいので無いことにします。
ある株を100ドルで買ったら、口座の残金はゼロになった。
その上で、1年経って100ドルのままの株を売った場合、どうなるのか。普通の感覚では、取引手数料無しで100ドルの株を売ったのだから、口座には100ドルの米ドルが出現するはずです。
ところが、実際は100ドルではなく、98ドルくらいの米ドルが口座に返ってくるだけです。残り2ドルはどこへ行ったのか。
2ドル(約200円)は、売却の結果利益が出たので税金として支払いました。
……納得できます、これ? 100ドルで買った株を100ドルで売ったのに、口座に残る米ドルは98ドル。
減ってるじゃん、て話です。
株価では損をしていません。為替ではむしろ利益を出しています。しかし、米ドルでの資産額は減少してしまいました。
こういうことが起こります。
これがもっと、為替の変動が1ドル=100円から110円ではなく120円とかであれば、日本円換算での利益の額も大きくなり、それはつまり支払う税額も大きくなり、米ドルの減少額も拡大します。
あるいは、株価は100ドルから90ドルとかに下がった状態で売却したのに、日本円換算で見ると為替で利益が発生してしまい、税金を支払うと手元に残る米ドルは90ドルよりさらに小さくなる。
損した上に税金払うとか、まるで体を張ったギャグです。
が、為替はそこそこダイナミックに動きます。1ドル=100円⇔120円であっても20%の変動です。でも、その20%の変動なんてそこそこ起こるのが為替なので、上に書いたギャグみたいな損失物語も、決して絵空事ではありません。
米ドル=日本円の5年チャート
円換算しなければいい? 証券会社は断固として日本円換算派
でもそれって日本円換算で損益を計算するから問題なんでしょ? オレは米ドルでの損益しか興味ねーし。
……やれやれ、まだそんな抜けたことを言うおつもりですか。日本円換算で物事を見るからおかしくなる? 米ドルを基準にしてこその米国株投資?
ぼくもそんなふうに思っていた時期がありました。いや、今でも気持ちははるか海の向こうの米国にあります。米ドルで米国株を買い、米ドルの配当金をもらい、米ドルの株価が上がると素直に嬉しい。それが自然だと今でも思います。
ただですね、そうは考えてくれない方々がいるのですよ。
誰あろう、証券会社です。
米国株投資を可能としている日本の証券会社はいくつかありますが、そのどれもが米国株投資を日本円換算で見ています。米国株投資のどこからどこまで、というわけではなくて、米国株投資のすべての部分が、証券会社にとっては日本円での投資です。
米国株投資家は基本的に米ドルが好きです。これはぼくだけかもしれませんが、自分は米ドル建ての資産を持ってんだかんな! という妙な優越感があります。
ただ、ぼくが1株100ドルの米国株を10株、合わせて1000ドル分買って、うっしゃあ、1000ドル分買ったぜえ! とか叫んでいても、証券会社は淡々と「11万1750円で取得」と日本円で記録しています。投資家の脳裏に強く刻まれている「1000ドル」ではありません。
買った株が200ドルも下げて投資家が悲鳴を挙げても、証券会社にとっては、2万2350円の下げですし、今日受け取った70ドルの配当金は、7822円です。
証券会社は米国株取引のすべてを、実は日本円で考え、組み立てています。背景にあるのは、税金の処理がどうしても日本円になる、という理由だと思います。
証券会社がそういう方針であれば、投資家の側が抵抗する術はありません。個人的には嫌ですけど、米国株投資は結局日本円なんだと認めざるを得ませんね。
米国株投資は結局日本円での投資。これを認めると見えてくるものがある
米国株投資も結局は日本円で計算される日本円の投資。これを認めると見えてくるものもあります。
まず、保有株が上がってさあ売却だ、となったときに「為替を踏まえると本当の利益の額はいくらなのか?」という視点が生まれます。
これは結構重要で、ぼくはつい最近まで米ドルでの損益ばかりを見て売買を繰り返してしまっていました。今振り返ると、あのときの「利確」は本当に確定すべき利益の水準だったのか、いや、そもそも利益すら出ていなかったかもしれない。そんなことも思います。
株価だけでなく、為替の視点ですね。
それから、為替の視点を入れることで、とある投資商品の優位性、と言われているものが消滅します。
とある投資商品とは、外貨建てMMFのことです。
様々な媒体で外貨建てMMFは、元本毀損の可能性が低く、かつそこそこの分配利回りもある。よって投資資金(外貨)の一時的な置き場所に最適であり、米国株投資と外貨建てMMFの相性はバッチリだ!
みたいな論調があります。
ぼくはそうは思いません。むしろ相性は悪いです。
次の記事は、その外貨建てMMFの「悪さ」について書く予定です。ていうか、その準備段階としての、本記事です。
キーワードは、日本円換算にしてみると物の見方が変わる、です。お楽しみに。
オザワークスでした。
外貨建てMMFの記事書きました。
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