オザワークスです。
知り合いからPayPay証券の10倍CFDでS&P500に長期投資すれば、右肩上がりのS&P500のこと、効率よく儲けられるんじゃないの?
という質問をもらったのでここで回答します。
もくじ
CFDってなんよ?
まず、PayPay証券の10倍CFDがどういうものなのか、少しだけ説明します。
その前にCFDってそもそも何なのか。
CFDは差金決済取引のことで、簡単に言うと、証券会社にお金を借りて株とかを売買する投資のことです。
CFDを知っている人からすると飲みかけのお茶を吹き出すほどランボーな説明ですが、話を単純にするためこれで押し通します。
例えば、手元の投資資金1万円で10万円分の株をCFDで買うとしましょう。1万円を担保に残り9万円を証券会社から借りて買うんです。
その後、買った株が2倍の20万円まで値上がりして売ったとしましょう。利益は10万円です。
この利益の10万円(+初めの投資資金1万円)は丸々投資家のもの。
これがCFDです。
で、PayPay証券の10倍CFDというのは、担保の自己資金1万円で10倍の10万円の取引をする、その10倍という倍率のことです。
CFDっつうのは取引の仕組みのことなんですね。
10倍CFDはやめとけ
ほいじゃ、その10倍CFDで米国株のS&P500に投資するのはどうなの?
結論から言うと、やめとけ、です。
理由は、S&P500は現物株(普通の株取引)でも十分儲かる。CFDでやっても面倒なだけ。メリット薄い。
確かに10倍CFDは上手くいくと10倍儲かるんだけど、そう簡単には行かない。
100回に1回は10倍儲かるけど、残り99回は損をする、そんなイメージ。
それでもCFDやりますかって話。
では、どうしてそんなに損しやすいのか、詳しく考えていきましょう。
S&P500のスジはいいのだが
CFDは取引の仕組み。では何に投資する?
米国株のS&P500で考えてみましょう。
株価指数S&P500の詳しい解説はこちら。
ホラこの通り。
で、これはこの先も上がっていきます。たぶん、きっと。
この将来も多分上がっていくであろうS&P500に10倍CFDで投資すれば、ひょっとして10倍儲かるのではないか?
この考え方自体は、実はスジは悪くないと思います。
長期的に上がるものに投資してあとはほったらかし。一番良い投資でしょう。
しかしCFDでってことになると話は変わってきます。
わずか2%の下落で強制売却。それが10倍CFD
何故なら、証券会社からお金を借りて投資するCFDでは、株価が下がると投資家が持っている株を証券会社が勝手に売ってしまうことがあるためです。
そして長期的には上がるであろうS&P500でも、ときには株価が下がることもある。
そんな、ちょっとぐらい下がっても大丈夫でしょ?
それがそーでもないんです。
PayPay証券の10倍CFDは、持っているお金の10倍のS&P500を買うことができます。
1:10ですね。この比率のとき、10倍CFDを利用する皆さんのスマホの画面には、証拠金維持率100%という数字が表示されているはずです。
1万円の資金で10万円分の株を買ったら証拠金維持率は100%。
10万円で100万円分買っても100%。
買ってから株価が下がると、この証拠金維持率が下がります。
80%になると、即刻その場で強制的に株を売却処分されます。
これ、株価が20%下がったらアウトってことじゃないですよ。
2%です。10倍CFDの世界では儲けも10倍ですが、株価の下落ダメージも10倍になっています。
よって、2%下落したらもうさよならです。
具体的には、1万円で10万円分の株を買った場合、10万円の株が9万8000円に下がったらもうアウトです。
2%。たった2%下がっただけで強制的に退場させられてしまうんですね。
2%の下落なんてそれこそ1日でそれくらいは動きます。
たった1日でやられる。
これが10倍CFDで儲けられない1番の理由です。ちょっと株価が下がっただけで終わる世界。
一度買ったらほったらかしができないのです。
実質的に株価は1ミリも下がれない
それだけではありません。
そもそも証拠金維持率が100%を下回った状態で(もちろん80%以上で)その日の取引時間を終えると「追証(おいしょう)」という通知が投資家に出されます。
この追証が出ると、その日のうちに投資家は新しく資金をCFD口座に投入して維持率を100%以上にしなければなりません。
それをしないと、次の日強制的に全部売られます。
つまり、80%以上なら何とかなるじゃないんです。基本的に100%を下回っただけでダメということです。
100%って、1万円で10万円の株を買った基本の状態ですよ。
その基本の状態から実質的に1ミリたりとも株価が下がることが許されない世界。
それが、10倍CFDなのです。
資金追加で楽にはなるが…
いや、それでもやりようはあります。
1万円で10万円分買うという比率を変えてあげれば、死にやすい息苦しさが緩和されます。
この息苦しさの比率をレバレッジと言います。
1:10の世界はレバレッジ10倍の世界です。
ここで、がんばって資金を2万円用意して10万円分の株を買ってみましょう。レバレッジ5倍。証拠金維持率は200%からスタートです。そうするとどうなるか。
そうすると、10万円で買った株が9万円まで下がるとそこで維持率が100%の限界を迎えます。これ以上は下がれません。
株価の下落は10%です。
10%の下落……この程度でも周期的に起きていますね。
今年の6月くらいに米国株がちょっと下がった時期があったでしょう。
このころ。まあ、これはダウ平均のチャートだけど。
こんな程度の下げが10%です。
これでギリギリ持たないのが2万円で10万円分の世界です。
これではとてもじゃないけど、1回S&P500に投資したらあとは昼寝を決め込むという具合にはいきません。
資金3倍でも耐えられる下落は20%
じゃあもっと資金を厚くして3万円。3万円で10万円分のS&P500を買う。
この場合だと、レバレッジは3.3倍。維持率は300%で冒険のスタートです。
10万円が8万円まで下がるとアウト。そこが終点の維持率100%。
下落率は、20%。まあまあの下落ですね。最高値から20%下落すると、弱気相場に入った、なんて言い方をされます。
ただ、20%の下落では誰も「暴落」とは呼びません。
あとはもうパターンです。4万円で10万円分買った場合は省略しますね。
コロナ、リーマン、暴落が来てしまったらもうどうしようもない
5万円現金を用意して、それで10万円分のS&P500を買ったらどうなるか。
レバレッジは2倍。維持率は500%です。
10万円で買った株が6万円まで下がると終わります。
下落率は40%。
記憶に新しい2020年春のコロナショックは、瞬間的に当時の最高値から40%下げました。
これはまさしく暴落です。
5万円資金を用意して準備万端で臨んでも、本当にコロナ級の暴落が起きてしまうと持ちこたえられるかギリギリとなってしまいます。
ちなみに、2008年のリーマンショック時には最大50%暴落しています。
6万円の現金を用意して10万円の株を買って持っていたとしても、強制的な決済を受けるかどうかになります。
資金を追加していくと結局現物株に行きつく
つまり何が言いたいか。
CFDはお金を借りて株を買うので手持ちの資金以上に儲かって儲かってしかたない状態になることもありますがそれは稀で、ほんの少しの下落でも大きなダメージを受けて強制的に退場させられることがほとんどです。
ぶっちゃけ儲けるのは難しい。
資金を手厚くしてやれば防御力は高まりますが、それでも大暴落が来れば持ちこたえられない。
だったらもう10万円資金を用意して、それで10万円分の株を買ってやる!
はい、それがレバレッジ1倍の現物株でございます。
現物株は100%自分のお金で買った株ですから、証券会社が勝手に売却したりは絶対にありません。
現物のS&P500であれば、たびたび下落したりときには暴落したりもしながら、長期的な値上がりをお楽しみいただけます。
難しいことはよくわからないという人は、大人しく現物株をやりましょう。
CFDはメリット薄い。やめとけ
CFDは防御力をあえて下げることによって攻撃力(利回り)を増す投資法です。
しかし、株価の下落にはめっぽう弱く、かなり資金を追加投入してやってもそれでも絶対安心にはなりません。
心のどこかで心配していないといけません。ほったらかしができないのです。
そして資金を追加投入するということは、ほかならぬ攻撃に特化したCFDの魅力をなくしてしまうことであり、だったらもう現物株でいーじゃん、とぼくなどはそう思ってしまいます。
S&P500なら長期でいけるんじゃ? と思っても、やってみるとこれがなかなか……CFDまで使ってやるようなことではないでしょう。
悪いことは言わないからやめときなさい。めんどくさいだけだから。
CFDの仕組みを知っておく意味はある
と、10倍CFDをボロクソに言いましたが、CFDというものの仕組みを勉強することはとても意義のあることだとぼくは思います。
誰が作った仕組みか知らないけれど、本当に大したものです。
そして仕組みを学ぶことによって、証券会社の「CFDで10倍儲かる」などの宣伝文句に心が色めき立つこともなくなりますし、同じ仕組みのFXで素人が大損ぶっこいてしまう流れもよく理解できます。
FXでやらかしてしまう人って、仕組みへの理解が乏しい場合が多いです。
よくわかっていないのにポジションを多くとってしまう(=レバレッジを上げる)とか、見ているだけでそりゃ破綻するわなって感じです。
FXも仕組みが理解できない人はやらないほうが良いでしょう。
理解して、それでも挑みたいという人は、どうぞご自由に。
CFDはそんな感じです。
オザワークスでした。
CFDの詳しい記事を書くと腕が疲労で死ぬ!
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