オザワークスです。
DMM.com証券が米国株現物の取扱をはじめました。ぼく自身はDMM.com証券に口座は持っていませんが、米国株投資家の端くれとして、ちょっとその性能を調べてみました。
もくじ
DMM.com証券とは?
DMM.com証券とは、DMM.comグループの1社で同グループの金融サービスを受け持つ証券会社です。
もともとはFXやCFDのみの証券会社でしたが、2018年春には日本株の現物を扱い始め、同年秋には早くも米国株の現物をもその領域に収める、というところです。
FX業者としてはなかなか人気のある会社のようなので、最近の株方面への進出は、FXユーザーを株式投資へと持って来たい意図があるのでしょうね。
DMM.com証券の米国株投資、こんな特徴がある
今回は、DMM.com証券での米国株投資の特徴をまずざっと挙げてしまいましょう。細かい話はそれからで。
DMM.com証券の米国株投資の特徴
- 米国株も特定口座に対応。
- 取引はすべて日本円での決済。
- 取扱銘柄は、個別株、ETF合わせて931銘柄。
- 米国株の注文受付時間が24時間ではない。これはちょっと……。
- 注文方法は3種類。指値、成行、IFDONE。
- 注文有効期限は最大30日。
- 取引手数料は無料。
- 為替手数料がエグい! 取引時は1ドルあたり片道25銭で普通だけれど、配当金の入金時には片道1円(100銭)になる。
- その他、約定絡みが独特の仕様
一覧にするとこんな感じです。結構ありますね。では、以下、細かいところを見ていきましょう。
米国株も特定口座に対応
DMM.com証券では、米国株であっても特定口座に対応しています。これなら安心して投資できます。
特定口座とは、投資における税金関係の煩わしさを解消できる制度です。特定口座で取引していれば、発生する税金の計算から納税の処理まで、すべて証券会社が投資家に代わって行ってくれます。便利な制度です。
特定口座のもっと詳しい説明はコチラ。
米国株も取引通貨は日本円のみに対応
DMM.com証券での米国株投資は、日本円のみで可能です。米ドルでは取引できません。公式サイトに特に記載はありませんが、おそらく受け取る配当金も日本円でしょう。
日本人に馴染みのある日本円で米国株に投資する。一見良いようですが、これには2つの問題点があります。
まず、為替コストの問題。米国株は結局は米ドル資産なので、日本円で投資できると言っても、どこかで米ドルに替える必要があります。それを投資家の側でやるか、証券会社がやるのかというだけです。
米ドルで米国株に投資する場合、為替取引は1回で済みます。日本円を米ドルに替えて、株を買う。売った場合も代金は米ドルで返ってきますし、配当金も米ドルで舞い込んできます。
これが日本円で米国株に投資すると、為替取引の回数が増えます。株を買うときに1回、これは同じ。しかし、株を売っても代金をいちいち米ドルから日本円に替えるので、ここで余計な為替取引が挟まります。
配当金も同じです。米ドルで出た配当金は毎回為替取引されて日本円で入金します。この配当金が入金するときの為替手数料が1ドルあたり1円なので、米国株の長期ホルダーには向いてない証券会社です。
為替取引には、為替手数料が掛かります。為替取引の回数が増えるほどに、手数料として支払っているコストは多くなります。その分証券会社は儲かり、投資家は損をします。
もう1つの問題は、日本円で米国株の取引をするたびに為替取引が絡んでくるため、いちいち計算がややこしいことです。
米ドルで株を買う場合は、シンプルです。買いたい株の分の代金と、取引手数料があればそれで良しです。
ところが、日本円で米国株を買う場合は、株取引に為替取引が同時に絡んできます。為替レートが1つならまだいいですが、スプレッド方式でTTSとTTBに分かれていたりすると、ぼくはもううんざりです。
ただ株を買いたいだけなのに計算がとにかくややこしい。日本円で米国株に投資すると、取引手数料や為替手数料を含んだ「投資コスト」を自分が一体いくら払っているのか、正しく把握できなくなりそうです。とても、厄介です。
ワンタップバイにしろサクソバンク証券にしろ、最近このパターンが多いです。今後米国株に参入してくる証券会社は、米ドルで米国株に投資できないことが多くなりそうな気がする。投資の初心者はもしかしたらそれで喜ぶのかもしれませんが、ぼくは嫌だなあ。
ちなみに、日本のネット証券で米ドルで米国株に投資できるのは、SBI証券、マネックス証券、楽天証券の3証券だけです。
取扱銘柄は、個別株、ETF合わせて931銘柄。バランス良し
DMM.com証券の取り扱う米国株の銘柄数はETFを合わせて931銘柄です。
ワンタップバイの29銘柄くらいだと自分で一覧表を作ろうという気にもなりますが、931はさすがにちょっと多い。DMM.com証券自身で取扱銘柄を張り出したページがありますので、詳細はそちらで確認願います。
えーと、931銘柄の中身ですが、成長株、安定株とバランス良く取り揃えたいい感じの取扱銘柄群ですね。ワンタップバイではごっそり抜け落ちていた金融、タバコ、通信、公益銘柄もしっかり組み込まれています。配当投資がはかどりますね。
ADR銘柄もあります。
ADRとは、米国預託証券(べいこくよたくしょうけん)といいまして、米国外の企業が米国の株式市場へ直接上場することなく、しかしながら米国の株式市場で取引できるようにするシステムです。
ADRで取引できる銘柄の例。【BTI】ブリティッシュアメリカンタバコ(国籍イギリス)、【GSK】グラクソスミスクライン(イギリス)、【BP】ビーピー(イギリス)と基本的にイギリス国籍の企業が多いです。
ADRの詳しい解説はコチラ。
米国株取引の注文受付が24時間じゃない!
米国株取引の注文受付時間が24時間いつでもOK! じゃないです!
SBI証券やマネックス証券をお使いの方は、え何言ってんの? 米国株の注文を出せない時間帯とかってあるの? 何それ、ウケる! って感じでしょうけど、マジな話なのです。
DMM.com証券では、16時を過ぎないと米国株の取引の注文すら出せないのです。お昼前に、注文出すだけ出しといて昼飯行くかあ、みたいなことはできません。無能です。
そりゃあないよう、DMM.com証券さん。SBIとマネックスは24時間年中無休で注文受付よ? 新規参入が負けちゃいけないって。
ちなみに15時からしか注文できないお前も同類な、楽天証券。
証券会社別、米国株取引注文受付可能時間一覧
証券会社 | 注文受付時間 (夏時間) |
注文受付時間 (冬時間) |
SBI証券 | 24時間 | 24時間 |
マネックス証券 | 24時間 | 24時間 |
ワンタップバイ | 24時間 取引も24時間可能 |
24時間 取引も24時間可能 |
楽天証券 | 15時~翌朝5時 (土日不可) |
15時~翌朝6時 (土日不可) |
DMM.com証券 | 土曜日以外 16時~翌朝5時土曜日 16時~翌朝3時 |
土曜日以外 16時~翌朝6時土曜日 16時~翌朝3時 |
注文方法は3種類。指値、成行、IFDONE
米国株の注文方法は3種類です。値段を指定する「指値」と値段に関係なく取引成立を最優先させる「成行」、それから連続注文のIFDONEです。
IFDONEはちょっと複雑で、1つの銘柄に対して2つの異なる注文を発注する、というものです。例えば、ある銘柄を指値で買え、という注文を出すのと同時に、最初の注文が成立したら今度は同じ銘柄が5%下がったら売れ、みたいな注文を1回で出せます。
ぼく個人としては、IFDONEのような複雑は注文方法は必要ないと思うので、指値と成行があれば十分です。
注文の有効期間は最大30日間!
米国株の注文有効期限は、最大で30日間です。これはなかなかいいですね。とりあえず指値だけ入れて、取引が成立するかどうか1ヶ月放ったらかしにしておけます。
まあ、マネックス証券は、最大90日有効ですけどね。それでもDMM.com証券の最大30日は、楽天証券の1日限りと比べたら雲泥の差。
……と書こうとしたら、この記事を作っている最中に楽天証券が、注文の有効期限を最大90日に伸ばしてきました。
楽天証券め、空気を読んだな。
各証券会社、注文有効期限一覧
証券会社 | 注文有効期限 |
SBI証券 | 最大90日 |
マネックス証券 | 最大90日 |
ワンタップバイ | 成行のみ (当日のみ) |
楽天証券 | 最大90日 |
DMM.com証券 | 最大30日 |
取引手数料は無料!
DMM.com証券は、2019年12月9日に他社に先駆けて米国株の取引手数料を無料にしました。
米国株を買っても売っても取引手数料は発生しません。これは画期的なことです。
がしかし、そのあとで配当入金時の為替手数料が異常に高い事実が暴かれたため、事態は急速にグズグズしてきています。
取引手数料を無料にしたからといって、何をしてもいいわけではない。
為替手数料がエグい。株取引時は片道25銭だが……
たとえ日本円での買い付けであっても、米国株投資は基本米ドルが絡む投資であり、為替取引はその都度発生します。DMM.com証券は、その為替取引の際の手数料が、株の取引のときは25銭です。
詳細を言うと、DMM.com証券にはドル=円の為替レートが2つあります。TTSとTTBの2つです。
まず、株を買う場合はTTSというレートが使われます。例えばテレビのニュースで今為替が1ドル=110円ちょうどだったとしましょう。このときDMM.com証券で米国株を買うと、適応されるTTSは1ドル=110円25銭となります。
そうです。25銭高いんですよ。ちょっとお高めの値段で米ドルを買わされるわけです。その差の25銭は何かと言うと、これが為替手数料というものであり、DMM.com証券の儲けの種です。
反対に米国株を売る場合は、TTBというレートを使います。これは、反対に安いんです。1ドル=110円だったら、TTBは1ドル=109円75銭です。
今度は米ドルで日本円を買うんですが、ちょっと高い日本円を買わなければなりません。その差額は25銭です。
と、ここまでは普通です。25銭の為替手数料は、競合する他社とも大体並んだ水準です。
DMMの為替手数料が問題となるのは、株の取引のときではなく配当金が入金するときです。
米ドルで支払われた配当金を日本円に換えて口座に入金するのですが、そのときの為替手数料が1ドルあたり1円(100銭)と相場の4倍になっています。
これではダメです。高すぎます。
と、このように、DMM.com証券の為替手数料は、なかなかのものです。競合他社と比べてみましょう。
証券会社の為替手数料比較一覧
証券会社 | 取引通貨 | 為替手数料 米ドルで取引 |
為替手数料 日本円で取引 |
SBI証券 | 米ドル 日本円 |
25銭 (住信SBIネット銀行 経由で4銭!) |
25銭 |
マネックス証券 | 米ドル 日本円 |
25銭 | 25銭 |
ワンタップバイ | 日本円 | 35銭 | |
楽天証券 | 米ドル 日本円 |
25銭 | 25銭 |
DMM.com証券 | 日本円 | 株取引時は 25銭。 配当入金時は 100銭。 |
DMM.com証券が絶望的に高いのがよくわかります。
DMM.com証券は取引の流れが独特
DMM.com証券の米国株取引の流れは、ちょっと独特です。システムがなんか特殊ですね。
流れで見ていくと、
- 16時以降、注文の入力
- 22時半ないし23時半、取引時間開始、注文の執行
- 翌朝5時ないし6時、取引時間終了
- 7時、このときの為替レートが取引に適応される
- 7時半以降、正式に取引が確定する
と、このようになっています。1~3はいいんですが、わからないのが4と5です。
どうもDMM.com証券では、米国の取引時間中に株を買えてもその瞬間の為替レートが使われるわけではなく、取引時間後の午前7時のレートを後付で適応するようです。そして、為替も含んだ一連の取引がすべて終了するのが、午前7時半以降だそうです。
なんじゃそりゃ!? って感じです。今まで見たことのない仕組みです。こんな証券会社もあるんですね。普通にしてくれればいいのに……。
まとめ。新規参入のわりにいまいちウリのないDMM.com証券
まとめです。
今回DMM.com証券が米国株の世界に乗り込んできたわけなんですが、結論から言えばいまいちです。
後発だからと目立とうとして取引手数料を無料にしてみたものの、激高な為替手数料が明るみになって「な~んだ」となってしまいました。
また、その激高な為替手数料を投資家に隠していたこともDMMへの印象を最悪なものにしてしまいました。
まあ、それでも米国株好きのぼくですから、特定口座にも対応しているしなんとか使ってあげたい気持ちにもなりますが、余った資金もアイディアも今の所ありません。無理をしてまで使う必要のない証券会社ですね。
正直、DMM.com証券よりも他の証券会社で米国株投資をしたほうがいいですよ。サービスが今のままならそう言わざるを得ませんね。
会社としても信用できません。
オザワークスでした。
DMMは、TTSとTTBのスプレッドが50銭なので、他の証券会社と同じ「片道25銭」ですね。カスタマーサポートに確認済みです。
たはは、ご指摘の通りです。
ぼくが為替を正しく理解できていませんでした。
記事は修正しました。ありがとうございます。